M&A仲介会社によって異なる手数料やその計算方法、手数料が発生するタイミングをまとめました。
一覧表の見方についても解説しております。
※なお、本情報は2024年4月1日時点で当該企業のHPに掲載されている公開情報となります。
※赤字の箇所は、相手先に応じて成功報酬の計算方法が異なるケースを示しています。
M&A仲介会社の手数料一覧
日本M&Aセンター
ストライク
M&Aキャピタルパートナーズ
M&A総合研究所
インテグループ
M&Aベストパートナーズ
オンデック
経営承継支援
CBコンサルティング
名南M&A
レコフ
一覧表の見方と注意点
着手金の有無
着手金は、M&A仲介会社と仲介契約を締結するタイミングで発生することが多いです。
着手金は徴収する仲介会社とそうでない仲介会社が有ります。
譲渡側(売手側)に対しては、株価算定をしたり、案件化をするための経費的な意味合いが強く、譲受側(買手側)に対しては、情報提供の意味合いが強いです。
徴収する仲介会社においては、着手金は案件が成約に至る場合でも至らない場合でも返金しない会社が多い印象です。
M&Aは成果物が最初の段階で読めないことが多く、初期コストを抑えたい顧客ニーズは根強い部分もあり、また、M&A仲介業者の増加による競争も激化しているため、M&A業界では着手金を無料化する動きもあります。過去ストライク社が着手金を廃止し中間金へ変更するなど報酬体系を変更したこともありました。
中間金の有無
中間金は、譲渡側と譲受側が基本合意(暫定の諸条件を両社で合意すること)をした時に発生することが多いです。
中間金は徴収する仲介会社とそうでない仲介会社が有ります。
M&Aを行うにあたり支援する機関は標準で6か月~1年程度と長く、その途中経過である基本合意時点で、一定の成果があったものとみなし報酬を請求するという意味合いが強いです。
中間金は、成功報酬の10~20%で最低報酬額を別途設定しているケースが多く、成約した場合には成功報酬の一部に充当する会社もあります。
中間金は、最終的にM&Aが不成立であったとして返金しない会社が多い印象です。
基本合意後、譲受候補先による買収監査(デューデリジェンス)を経て最終契約へと進みますが、必ずしも基本合意したからといって成約するとは限りませんので、譲渡側・譲受側双方にとって手出しするコストとなります。
成功報酬の計算方法
成功報酬額の計算方法は各社によって異なり、M&Aに初めて取り組む方には非常に難解といわれています。
基本は以下の計算式となります。
①、②とも仲介会社によって異なりますが、概ね以下に大別されます。
①については、M&Aで譲渡する会社の総資産額や、実際にM&Aで譲渡した際の株価などの金額が入ります。
総資産や企業価値には負債も含まれるので「(移動)総資産」で成功報酬額を計算する仲介会社は、「M&A譲渡金額に対して実際に支払う仲介手数料額の割合が大きくなる」という傾向があります。これは、譲渡金額を純資産を基準に計算する取引が比較的多く、純資産が大きくなくても負債額が大きい会社は、譲渡金額は大きくなくても仲介手数料が高くなってしまうためであるからです。
一方、仲介会社側からは、譲渡金額によらずB/Sの値から売上額が読みやすい点や報酬額を増やせる点で、「(移動)総資産」を好む部分もあります。
譲渡側(売手側)には、「譲渡株価」の方が好まれやすいことから、営業的な要素も勘案して「譲渡側は譲渡株価で計算し、譲受側は総資産で計算する」と、計算方法を譲渡側と譲受側で変えている仲介会社も存在します。
②のレーマン料率については、概ねどの仲介会社も同じですが、5億円以下の部分を細分化し、最大10%程度まで料率設定する仲介会社もあります(その場合当然上記料率よりも手数料が高くなります)。
最低報酬額の設定
上記成功報酬の計算においても、各社設定している最低報酬額を下回る場合には最低報酬額が設定されてしまうので注意が必要です。
例えば、譲渡額1億円の会社が、譲渡株価レーマン方式の仲介会社を使った場合、1億円の5%で成功報酬額は500万円となると思いがちですが、この仲介会社が最低報酬額で2,500万円を設定していれば、実際に支払う成功報酬額は2,500万円となります。
業者側にとって高い方が望ましく、顧客側にとって低い方が望ましい、というのが最低報酬額の取決めであるともいえます。
なお、中小企業庁登録の「M&A支援機関」における最低報酬額の設定は、過去公表されている多数の業者をサンプルに取った分布データと、上記仲介会社の最低報酬額を重ねると以下のようになります。
※引用:中小企業庁 財務課「M&A支援機関登録制度実績報告等について」
近年の傾向として、中堅のM&A仲介会社の最低報酬額が徐々に上がっている傾向があります。
インテグループは過去最低報酬金額500万円にしていた時もありましたが、1,000万円、1,500万円と上昇傾向にあり、経営承継支援も、過去最低報酬金額500万円(譲渡側)にしていた時もありましたが、2024年4月1日時点では1,000万円となっております。
M&A仲介会社の裾野は広く、最低報酬金額を500万円以下に設定している仲介者数も数としてはかなり多いのも特徴であるため、二極化が進んでいるともいえます。
この状況において、顧客側としては視野を広く業者選定することで結果仲介手数料を安くすることができる可能性があるともいえます。
仲介会社の成功報酬の計算方法は難解ですので、とにかく仲介手数料を低くしたいという方は、以下の方法で業者選定をするのがよいでしょう。
② 複数の仲介会社から株価査定を取り、自社の株価について大体の水準感を理解する
③ その水準感で各社の見積もりを取り、計算方法の違い・実際の手数料を理解する
成功報酬の発生タイミング
M&A仲介手数料の金額のみが注目されがちですが、成功報酬の発生するタイミングは非常に重要です。
この違いを理解していないと、場合によって、M&Aは実行されないのに成功報酬を支払わないといけないという状況に追い込まれることがあります。
成功報酬発生のタイミングに関しては、大きく以下の2つに大別されます。
・クロージング日(資金決済日)
M&Aは、譲渡側と譲受側の条件が決まると最終契約書(株式譲渡では株式譲渡契約書、事業譲渡では事業譲渡契約書)を締結します。
ただし、必ずしもこの締結と同日に譲渡代金の受け渡しをする資金決済を行うとは限りません。
実務上、最終契約書にはクロージングまでの義務が譲渡側(売手側)に課せられるケースがあり、例えば、「取引先からM&A後も取引継続できることを示した念書を取入れること」や、「従業員から未払残業代が無いことを確認した確認書を取入れること」といった義務を譲渡側(売手側)が負うことがあります。
この対応をする期間も加味して、最終契約書締結日からクロージング日まで一定期間空けるのですが、この義務を満たせない場合などでクロージングを行うことが難しくなってしまうこともあります。
また、譲渡側(売手側)の義務ではないのですが、譲受側(買手側)がM&A資金を金融機関からの融資できた場合にM&Aを実行する(融資できなければ白紙にする)という停止条件付の最終契約書も存在します。
さらに、地震などの天変地異などによって、経営に大きな影響が出た場合にはM&Aを取りやめることができると記載されることも少なくありません。
つまり、「最終契約書は締結したのに、クロージングを迎えられない」ということがあるのです。
そうなると顧客の立場にとっては、最終契約書締結をトリガーに成功報酬を徴収する仲介会社を利用することは、この大きなリスクを負うことになります。
この点については、「最終契約書の締結日」なのか「クロージング日(資金決済日)」なのかを明確に区別して仲介会社を比較する必要があります。しかし、言い回しが分かりづらい会社もあるため、厳密には契約書ベースで確認した方がよいですが、概ね以下のような見分け方になります。
M&A業者側には早めに売上が確定できる「最終契約書締結日基準」を取入れる仲介会社も多く、特に上場仲介会社では好まれやすい傾向にあるといえます。
しかし、M&Aで受け取る代金で成功報酬を支払おうと考えている方も多いと思いますので、最初の業者選定からきちんと確認して選ぶようにしましょう。
M&A仲介会社の手数料の「高い」「低い」の違いは数字として明確にありますが、そのM&A仲介会社のサービスの「質」とは基本的に関係が有りません。
高いから選ぶべきではないとも言えないですし、安いから危ないというものでもありません。M&Aの流れ自体は基本的な型があるのでコンサルティングの内容に大きな違いは普通出ないからです。それでも、コンサルタントによって説得力が違う、納得感が違う、というのはそのコンサルタント個人の経験値や能力によるものかもしれません。
M&Aコンサルティング業務というのは基本的にはどれだけシステム化しても属人的な部分が大きい業務ですので、担当者がどうか、という部分が、成果に対する影響として最も大きい部分の一つともいえます。
所定の報酬と合わせて、担当となるコンサルタントの質も見極めるようにしましょう。