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「韓国企業に会社を売却したい」海外企業も視野に入れてM&A検討するメリット

国内での中小企業M&Aが盛んになっていますが、取引の相手先が外国企業になるというケースはあまり多くありません。

この理由としては、日本企業の経営者が外国人に会社を売ることに抵抗がある、といったことや、中間に立つ仲介会社やM&Aマッチングプラットフォームが、外国企業が取引当事者になるようなケースをそもそも想定していないといったことが原因として挙げられます。

韓国はエレクトロニクスなどの分野において世界でも大きなシェアを持っており、新しい技術への投資は国内外問わず盛んに行われています。昨今では中小企業と言われる規模感同士の企業でも国を跨ぐクロスボーダーM&Aを行うようになっておりますので、自社のM&Aの可能性を広げるために、海外企業を相手として検討してみるのもよいでしょう。

今回は、韓国企業とのM&Aについて、会社や事業を売りたいオーナー様向けの視点でお伝えしたいと思います。


韓国企業とのM&A


韓国は日本の隣国であり、昔から文化交流やビジネス上の取引が盛んに行われています。

国としてのイメージは年齢層や時の政権の影響などによっても異なりますが、日本の貿易相手国として上位の国であり、軍事的にも密接に関わり合いのある国です。

韓国企業とM&Aを行うメリットについては以下のようなことが考えられます。

貿易友好国である

日本にとっての貿易相手国としての韓国は輸出入総額ベースで3位(2017年)、韓国にとっての貿易相手国としての日本は5位(2017年)と両国にとって貿易相手国としての存在感がある関係性です。

投資活動に関しては、日本と韓国で2003年1月に発効した投資協定により、原則として、投資活動で相互に内国民待遇と最恵国待遇を与えることが取決めされています。

他のアジア諸国と異なり、一部の例外を除き、外資規制もありません。また、韓国の商法は日本の商法をルーツにしていることから法律関係についても日本と近い国であり、取引に関して日本人が理解しやすい国でもあります。

時の政権の影響で関係悪化することもありますが、民間レベルでは古くから親密な関係が継続しており、また、軍事的連携関係も緊密である点は安心材料といえます。

距離の近さ・文化の近さ

日本と韓国は隣国であり、交通の面も大変便利です。

羽田空港・ソウル仁川空港間で飛行機で2時間程度、福岡空港と韓国第二の都市である釜山金海国際空港間は飛行機で50分程度です。

中小企業のM&Aでは、M&A後の管理上観点から、比較的近隣同士であったり交通の便の良い立地関係にある企業間でM&Aが行われる傾向がありますが、この距離の近さは重要な要素となります。

また、文化が近いこともあり、人間関係を築きやすい点も挙げられます。

昨今の韓流ブームなどの影響もあり、若年層を中心に韓国に憧れを持つ人も多く、韓国系企業となることでリクルーティングにプラスになる企業も出現しており、韓国語を習得した人材の採用は容易になっている面もあります。

ウォン高円安が進行

クロスボーダーM&Aを行う上で、為替の影響は投資マインドに大きな影響を及ぼします。

そこで為替についてみてみると、直近5年の韓国ウォン/日本円の為替変動推移は以下のようになっています。

徐々に韓国ウォン高・日本円安という形で推移しています。

これは、韓国企業が日本企業を割安でM&Aでき、売却する側の日本企業としては高い条件を交渉しやすくなることに繋がります。一方で、もしこれが反転し、円高・ウォン安になった場合は日本企業が韓国企業を割安でM&Aしやすくなります。

現在は日銀の金融緩和策により過去水準よりも円安になっている最中ではありますので、売却したい日本企業にとっては好機といえます。

クロスボーダーM&Aで利用されるスキーム


クロスボーダーM&Aに関しては、国内M&Aと同様のスキームが取られることもあれば、特殊なスキームが取られることもあります。

2006年の会社法改正により三角合併が解禁され、クロスボーダーM&Aで活用される機会が増えました。以下のようなイメージとなりますが、売手株主が買手企業(親会社)の株主を取得し、売手企業が買手企業(子会社)に吸収合併されるというものです。

売手側に株主が多数いる場合に利用価値があり、また、買手側も現金を用意しなくてもM&Aができるためメリットもあります。一方で、売手側の株主は外国企業(親会社)の株式を取得する点について換金性に難がある点や、吸収合併によって馴染みのある社名が消滅してしまう点から、三角合併が好まれないケースも多いです。

他、中小M&Aでよく利用される株式譲渡や事業譲渡でM&Aを行い、売手側が現金を対価として受け取るケースもあります。

外国企業が日本企業をM&Aしたいという思惑の中には、日本という比較的クローズドな市場でシェアが欲しいという希望が含まれるケースも多いですが、事業譲渡でM&Aした場合、期待していた許認可等が引き継げないなどの問題が発生する可能性もあるので事前の検証が必要です。

一定規模以上のM&AになるとLBOなどのスキームも用いられるケースもありますが、金融機関も巻き込むスキームになるため、取り扱い可否に加え、スケジュールも長くなる傾向があります。


実務的には、M&Aの相手企業が外国企業だとコミュニケーションに時間がかかる傾向はあるので、スケジュールは日本企業同士のM&Aよりも長めのスケジュールを見ておく必要があります。

しかし、外国企業というのももっと広義の意味でとらえると、日本法人でありながら経営者が外国人というケースもありますが、日本や日本人へのそもそもの理解度やM&Aスキームの壁が無ければ、逆に外国人経営者の方が判断が早くM&Aがスムーズに終わるというケースもあります。

弊社の過去実績では、外国人経営者が運営している日本法人に、日本法人を株式譲渡で売却するという事例がありましたが、複数の日本人オーナーの買手候補先企業が提示条件どうしようかと悩んでいる間に、かなり良い金額条件でスピーディに外国人オーナーの企業がM&Aしていったのが特徴的でした。

外国人に比べ、日本人はM&Aに関しても保守的かつ慎重に判断する傾向はあるように思いますので、この辺りは国民性が垣間見れるポイントかもしれません。


とはいえ、国や文化が異なる外国企業とのM&Aは、係争に発展するような思わぬトラブルも起こり得ますし、関与する専門家のコストも国内企業間のM&Aよりも高額になってきますので、この辺りは十分考慮した上で検討を行う必要があります。


KOTRA(大韓貿易投資振興公社) 大阪貿易館様との連携


弊社はM&A相手先企業の探索でKOTRA(大韓貿易投資振興公社) 大阪貿易館様と連携しております。

KOTRA(大韓貿易投資振興公社)様は、1962年に韓国政府により、貿易振興及び海外市場調査のために設立された独立行政法人です。公的な機関として、投資交流や人材交流の支援も行われており、国内4カ所に拠点を持ち、全世界84か国・129カ所に拠点を持たれております。

投資誘致事業としての動きも活発で、「韓国に会社を作りたい」「韓国に工場を建てたい」「韓国企業に出資をしたい」という日本企業のご相談も受けられております。詳細は専用サイトInvest KOREA(http://www.investkorea.org/)でも紹介されております。

弊社も、日韓M&Aについて交流させていただいており、「日本企業に出資したい」「日本企業に出資していただきたい」いずれの場合も各種連携させていただいております。

※KOTRA(大韓貿易投資振興公社)様は公的な機関ですので、M&A実務の部分については介入せず、弊社含め民間のM&A支援会社や士業事務所で実務を支援する形式となります。

「クロスボーダーなんて大企業がやるもの」と思われる方もいらっしゃるいかもしれませんが、昨今では韓国企業が日本の中小企業に関心を持ち、出資したいというケースも増えてきています。

弊社では主に中小企業のM&A支援を行っておりますが、年商規模で数千万円~100億円(但し、ボリュームゾーンは年商1~10億円くらい)のお客様となっており、この規模感でも韓国企業が興味を持つということもある、ということです。

韓国は産業別に、「電気・電子機器」「自動車」「鉄鋼」「石油化学」「造船」がとても盛んで、世界的にも競争力がある企業が多く対外投資を積極的に行っている企業もあります。また、日本の強みである「半導体材料」「製薬」「ヘルスケア」「製造業」などの分野については、外国企業から関心を持たれるところでもあります。

近年では自社の技術は海外の企業様も興味をもっていただけるだろう、とグローバルな視点でM&A連携をお考えになる日本人経営者様も国内で増えている印象ではありますので、もし、そのようなご関心があれば一度弊社にご相談いただければ幸いです。

弊社では、日本企業間の中小M&A支援に数多く実績があり、日韓M&Aについては日本語が流暢な韓国の士業の先生とも連携しつつ実務面のサポートを行っておりますので、「日本企業とのM&Aと比較してどのような点に注意しないといけないのか」「カルチャー面の融合は難しいのか」など、リアルなお話もできるかと思います。

お問合せの際には、以下のお問合せフォームよりお問合せいただけますと幸いです。

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