半導体・電子部品調達に関わっている会社であれば、自社が保有している在庫が滞留してしまうというリスクがあります。
当サイトは中小企業のM&Aが主題にはなりますが、M&Aの検討を進めている仲でも売手側企業が抱える滞留在庫をどうするのか問題は常に悩ましい問題です。
今回は半導体・電子部品の滞留在庫を買い取ってもらう方法について、一部の販売会社を取り上げつつお伝えしていきたいと思います。
電子部品在庫が滞留する背景
半導体・電子部品調達に関わっている会社で滞留在庫が発生するケースとして、以下のようなケースがあります。
・自社製品が生産終了になってしまい見込み発注していた分が滞留してしまった
・製品梱包の関係で端数が滞留してしまった など
<販売店側>
・顧客の量産立ち上げを見込み発注したものの、量産しなくなった(もしくは仕様変更となり部品が搭載されなくなった)
・引取責任の無い見込み発注をしている中、顧客側の搭載製品が生産終了になってしまった
・顧客側・メーカー側の商流変更により需要が無くなり、引取交渉にも失敗した
・PCN(仕様変更通知)により、使用変更前の製品を納入できなくなってしまった など
セットメーカー側の立場としては、その部品を使用している自社製品が生産終了になるとその製品の為に調達していた在庫が滞留することがあります(引取責任有で販売店側に先行発注していた分も含めて)。
基本的には歩留りなども考慮し、生産終了にあたり残りの在庫数など加味して最終生産数を調整するものではありますが、製品の梱包ロットの関係もあるので、全てきっちり数を決めきることは難しいです。実際は、一定確率で不具合も発生するため、予備も全く考慮せず計画を立てることもリスクがあるものです。
販売店側の立場としては、基本的に販売先であるセットメーカー顧客の注文書や引取責任のある内示があれば滞留在庫というのは発生しないものですが、半導体を始め電子部品は非常に納期が長いこともあり、セットメーカーからの受注に基づいて発注していては納期に間に合わないため、販売側かセットメーカー側がリスクを取って先行発注するという運用になることも多いです。
セットメーカー側か販売店側のどちらがリスクを負うかは両社の関係性などにもよります。
販売側がセットメーカー側にお願いをして製品を採用してもらったり、販売側が他販売店との商流獲得競争で取引条件を緩くしたのであれば販売側が譲歩するということも多いです。一方、販売側が国内の総代理店などで、他の販売店から調達できないようなものであったり、その製品自体が他メーカー品で代替が難しいようなケースでは販売側の交渉力が多少強くなることもあります。
いずれにしても在庫が余ってしまった時は、その処分について検討する必要があります。
他の業界で行うような、在庫が余ったため他のセットメーカー向けに販売する、ということも実際難しく、例えば半導体では、同じ機能を持つ製品であってもパッケージが違ったり、梱包形態が違ったり、温度のグレードによって細かく分類されているので、不要になった製品をそのまま他の顧客に販売できるケースというのはある程度の規模感の販売店でもある種奇跡に近い感じになります。
そのため、半導体・電子部品については市場販売会社もその存在価値があります。
市場販売会社への販売以外にも販売店が仕入先に返品する仕組みなども一部では存在しますが、市場販売会社は1個単位で売買できるケースもあるので余った少量の在庫も販売できますし、そもそも少量しか使わない試作用途での需要や、既に生産終了している部品を入手することなどにも対応できます。
市場販売会社まとめ
以下に、半導体・電子部品の市場販売会社の一例を挙げてみます。
半導体・電子部品調達に関わっている会社であれば一度は目にしたことがある会社かもしれませんが、ご参考いただけますと幸いです。
チップワンストップ
株式会社チップワンストップ(https://www.chip1stop.com/about/)は神奈川県に本社があり、電子部品・半導体の通販サイト「www.chip1stop.com」の運営を行っている会社です。
日本法人ではありますが、株主は世界的な半導体商社であるArrow Electronics, Inc.(米)という会社です。
サイト名の通り、電子部品・半導体・制御系部品を1個から購入することができ、即納在庫が300万点以上で、最短即日出荷が可能とのことです。
チップワンストップでは、自社の電子部品・半導体の他、部品回りのあらゆる製品を、チップワンストップサイトで販売することが可能なようです。
(参考)貴社製品の掲載に関して(https://www.chip1stop.com/about/handling/)
国内メーカーの購買担当者・開発担当者においては、古くから馴染みがあり知名度もあるサイトであるため販売に繋がりやすい可能性があります。
Digi Key(ディジ・キー)
Digi Key(https://www.digikey.jp/)は米国に本社を置く電子部品の販売会社です。1997年にグローバルウェブサイトを公開して以来、45の国と地域でウェブサイトを展開し、22言語に翻訳、26の通貨に対応している、世界的な半導体・電子部品の市場販売会社です。
Digi Keyでもサイト内で販売することができるようです。
海外発送も可能とのことで、Digi Keyの倉庫から全世界180か国以上への発送が可能とのことです。
他、市場販売会社も同様かと思いますが、取り扱いできる製品は正規品の新品在庫となり、 中古品、再生品、模倣品などは取扱いできません。また、軍事、QPL、原子力、航空宇宙関連の特別な承認を必要とする製品も扱えないとされています。
コアスタッフ
コアスタッフ(https://www.corestaff.co.jp/)は東京に本社を置く半導体・電子部品の販売業務等を行っている会社です。
運営サイトであるコアスタッフオンラインでは、余剰在庫の一括買取が可能です。
(参考)余剰在庫削減のご提案【一括買取】(https://www.zaikostore.com/zaikostore/service/surplusStock_ikkatsu)
利用できるのは、部品メーカー、正規代理店、国内セットメーカーとなりますが、早急に処理が必要な在庫を一括で買取りしてもらえ、買取完了後コアスタッフオンラインで販売するため買い戻しすることも可能とのことです。
すぐにまとめて在庫を処理したいという会社は有効利用できそうです。
上記の他にも半導体・電子部品を販売できる先はあるため、在庫の処理にかけられる時間的な余裕も考慮して、見積を取りながら検討するのもよいかと思います。
事業を終了させるならM&Aで売却するという選択肢もある
半導体・電子部品の在庫を一括で処分したい、という会社様の中には、今後半導体・電子部品の調達業務を終了するという会社様もおられるかと思います。
中小企業様の中には、後継ぎがいないことなどで事業を終える検討をされている方も近年増えてきておりますが、事業を継続しつつ、第三者に会社や事業を売却するというM&Aは現在盛んに行われています。
M&Aは場合によって、従業員を解雇する必要もなく、取引先に頭を下げ今後も販売する見通しのある商流を自ら手放す必要もなく、在庫保管のために用意していた倉庫を原状回復して明け渡す必要もない形で行うこともできます。そのため、余計なコストを掛けずに、会社や事業を整理することができる合理的な行為ですので、一度事業を閉める前にM&Aを検討してみるというのもよいと思います。
ちなみにM&Aを行うケースでも「滞留在庫をどうするか」という問題は発生します。
業種別には特にアパレル業などで多い傾向がありますが、今後販売する見込みのない滞留在庫が大量にあり、簿価上は健全に見えても実際の財務は悪いというケースがあります。
例えば、帳簿上1億円の在庫が計上されていても、実際に販売できる見込みの在庫が3,000万円であれば、M&Aの買手としては在庫の価値3,000万円とみることが一般的です。
そのため、価値の無い滞留在庫をどうするかは、M&Aの売手にとっても買手にとっても悩ましい問題になります。
半導体・電子部品については、上記でご紹介したような市場販売会社もあるため、顧客や仕入先に引き取ってもらえなかった不要な在庫は専門のプラットフォームで売却したり専門の市場販売会社に販売するなどして、現金に換えるという選択肢も有効な手段になります。
例えば、M&Aで株式譲渡交渉を行う際、実務的には現預金で税引後ベースで1円増えれば、その分株価総額も1円上がることを許容する買手も多いので、よい条件で売却する意味でもキャッシュに替えられるものは替えておいた方が良いです。
さらに、通常法人の現預金を個人に移そうとすると所得税・住民税・社会保険料などかなり差し引かれるところですが、M&Aで株式譲渡をすると売却代金が分離課税として扱えるため約20%程度の税率で収まり、併せて売却代金の一部を役員退職金として受け取れればもっと実効税率を下げることも可能です。
最終的な売手オーナーの手取額を考える意味でもM&Aは非常に有効な手段となりますので、一括して在庫を売却して事業を終えようとしている方はM&Aの選択肢も検討するのもよいかもしれません。
弊社は、電子・電気・機械分野で専門的なM&Aサービスを行うことが可能で、最低報酬額も同業者の設定している中では、中央値以下で低水準ではあるので、一度ご相談いただけると幸いです。
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