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「小規模M&Aは受取代金の半分が手数料?」統計データから読み解く業者手数料の実態



これから会社を売却しようとしている方で、M&A業者の手数料は非常に高い、と考える方はとても多いです。

値段が高いか安いか、は個人の価値観によるところでもありますが、金額だけのことを考えると中にはむしろ清算した方がよかったんじゃないかという事案もあります。

ここでは、実際にM&Aが成立したケースにおいて、譲渡金額と比較してどのくらいの業者手数料割合だったかを示すデータを用いて、「いかに小規模のM&Aでは業者の手数料割合が高いか」について解説していきたいと思います。

本記事をお読みいただければ、ご自身のM&Aで業者を利用するべきかどうか、もし利用するならどういう業者を利用したらよいか、について分かるかと思いますので最後までお付き合いいただければ幸いです。

M&A金額における業者手数料の割合


まず、M&Aの譲渡金額レンジ別に、どのくらいの割合で業者へ手数料を払っているのかについて以下の表にまとめましたのでご覧ください。

※中小企業庁「M&A支援機関登録制度実績報告等について」及びM&A支援機関登録制度HP「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」を加工


この図の見方としてはこうです。

M&A譲渡金額が500~1,000万円の案件について、業者への手数料割合の中央値は50%(2022年度)ということです。例えば、成約金額が1,000万円であれば、業者手数料はその50%、500万円を支払っているということです。

手数料率を低い順に並べて、第一四分位(低い方から25%)にあたる成約実績は23.8%(2022年度)、第三四分位(高い方から25%)にあたる成約実績は86.9%(2022年度)です。

このデータから以下の内容が分かります。

・譲渡金額の規模が小さければ小さいほど、業者への手数料割合が多くなる
・レーマン料率で言われる5%程度になるのは、譲渡金額が3億円を超えたくらいから


まず、M&Aの譲渡金額規模が小さければ小さいほど、割合として大きい手数料を業者に支払っています。ある意味手数料負けをしていると言えるかもしれません。

この主な原因は、M&A業者が設定する最低手数料です。

上場しているM&A業者では最低手数料が2,000万円以上という設定だったりもしますが、この設定があることで「M&A譲渡金額は少額なのに、手数料はたくさん払っている」という現象が起きます。M&A取引は不動産のように売買額の3%などと法律で定められているわけではありませんので、実質10%取っていても20%取っていても違法という訳ではありません。

譲渡金額の規模が小さければ小さいほど、この最低手数料の負担が重くなる傾向があるため、手数料割合が大きくなります。

譲渡金額500~1,000万円のレンジでは中央値で50%ですので、M&Aしてもあまり手元にお金は残りません。これでも業者を使ってM&Aしようという方が存在するのは、「借金ごと会社を譲受してくれるならタダであげてもいい」という方がいるからで、そういった案件では、M&A実施⇒譲渡金額を一旦売主が受取⇒それをそのままM&A業者に支払、で完結し、売主の手元にはお金が残らないのが特徴です。

概ね、譲渡金額が数千万円くらいに落ち着きそうなときには、業者への手数料として実質10%以上徴収されるというのが実態に近いようです。もっと言うと、仲介会社の場合は買手からも手数料を徴収するので、自分が払っている手数料の倍以上が業者手数料となっていると考えてもよいでしょう。

とはいえ、自分で買手を見つけて交渉する、というのはそれほど簡単ではないのでM&A業者の付加価値もあると思いますが、売主側が、あまり譲渡金額が見込めない中でも、1円でも手取り金額を増やしたいというお考えがある場合には、M&A業者の手数料にそれほど払えないというもことあると思います。そういった場合には、自らM&Aマッチングサイトを利用したり、できるだけ最低手数料の安いM&A業者を探す、というのも有効な手段になります。

次に、レーマン料率*で言われる5%程度に収まってくるのは譲渡金額が3億円を超えたくらいから、となります。

*レーマン料率とは、M&Aの手数料計算で業界標準的に利用される料率のことで、概ね次のように取引金額に応じて料率を掛けて手数料を計算する方法です。5億円以下の部分:5%、5億円超~10億円以下の部分:4%、10億円超~50億円以下の部分:3%。


これはなぜかと言うと、多くのM&A業者が、「手数料の計算方法はレーマン料率によって計算される金額とする。ただし、最低手数料である〇〇円を下回らないものとする」という趣旨のアドバイザリー契約を結んでいるため、「レーマン料率で計算した手数料金額」>「最低手数料」となってくるこのくらいの譲渡金額の案件からレーマン料率である5%程度に収まってくるのです。

譲渡金額が3億円となると、最低手数料が500万円の設定でも1,000万円の設定でもレーマン料率5%の計算で出る1,500万円の手数料となり、当然ながら手数料割合は5%となります。

それでも5%を超えるケースがある、というのは、一部、最低手数料が2,000万円や2,500万円という設定の業者もいることや、業者によっては「譲渡金額の5%」ではなく「総資産額の5%」といった基準を用いることがあるため、必ずしも均一にはならないように思います。

ちなみに、M&A業者の最低報酬金額は過去以下のような分布データが公表されていますが、どこにどのくらいのウェイトがあるかで統計データ全体の数値にブレが出やすいかも想定できます。

※中小企業庁「M&A支援機関登録制度実績報告等について」を加工


以上のことから、言えるのはこのようなことかと思います。

・譲渡金額が1,000万円、2,000万円という水準だと業者の手数料で手残りが大幅に少なくなることがある
・そういった場合で手残りを残すためには、自分でM&Aを行うか、最低手数料が安い業者を探すのがよい
・譲渡金額が3億円を超えてくるあたりになると、概ねレーマン料率に収まることが多くなってくる
・ただ、最低報酬額が高い業者や、譲渡金額レーマンを採用していない業者になるとこの限りでないので注意が必要


ちなみに、譲渡金額が優に5億円を超えるケースで、「どこに依頼しても手数料が一緒なら大手の方がよいだろう」と進められる方もいますが、最低手数料が安い業者の方が値交渉がしやすい面もあるのは覚えておきましょう。「レーマン料率で計算すると手数料が2,500万円になるけど、固定1,000万円で仕事を受けてくれないか」という形で業者が仕事を受けるケースも普通にあります。弊社の場合でもマッチングの難易度が低いと思われる案件に対して、譲渡側手数料を大手の半額以下で対応した実績などもあります。


M&A業者の競争激化と完全成功報酬型


M&A業者の手数料が譲渡金額に対してどのくらいの割合か、という点についてお伝えしてきましたが、M&A業者の手数料は必ずしも「M&Aが成立した時に一括払い」という訳ではありません。

2022年度(2022年4月~2023年3月)の売手である譲渡側の手数料設定ではこのようなデータがあります。

・成功報酬のみの業者:52.0%
・着手金/中間報酬/成功報酬の業者:46.9%
・着手金/中間報酬のみの業者:1.1%


業者の中には、成功報酬以外に着手金や中間報酬を取る業者も半数程度いるということになります。

ちなみに、2021年度(2021年4月~2022年3月)では以下のようになっています。

・成功報酬のみの業者:47.1%
・着手金/中間報酬/成功報酬の業者:50.8%
・着手金/中間報酬のみの業者:2.1%


2021年度から2022年度にかけて、様々な段階で手数料を徴収していた業者が成功報酬のみの手数料体系(完全成功報酬)に変えたか、もしくは、新規で登録した業者が完全成功報酬のところが多かった、という可能性があります。

M&A業者はまず売手を見つけて仲介契約を締結し、それについて買手を付けていく、という流れで動きますので、売手に選んでもらわないと話が始まりません。このような中で業者の数も増加傾向にあるので、顧客獲得競争は厳しさを増しているはずで、その一環で顧客受けしやすい完全成功報酬が採用されやすいのかもしれません。

今後の手数料の徴収方法であったり、最低手数料の金額設定が状勢によって変化していくとは思いますが、業者を選んだ後に後悔しないよう、最初の段階で統計データなどもみつつ判断されるとよいかと思います。

弊社はこういったデータを用いた相場観や考え方などもお伝えしつつ、当事者の方が納得しやすい環境を提供しておりますので、お困りの際はご相談いただけると幸いです。

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