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「事業承継・引継ぎ補助金の申請には相見積を取らないといけない?」相見積が免除になるパターンも解説


「事業承継・引継ぎ補助金」を申請する際に相見積で困っている、という方もいると思います。

既に依頼している専門家がいるのに、相見積を取らないといけないの?

という疑問は、実際中小企業オーナー様から聞く機会もあります。

公募要領にもある通り、「相見積を取らなくても良いケース」というケースも存在しますので、この辺りをきちんと理解して申請させるとよいかと思います。

※本記事は、記事作成時点で最新の「事業承継・引継ぎ補助金」9次公募(相見積については専門家活用)の公募要領をもとに記載しております。申請にかかる正確な内容は公表されている公募要領をご確認いただけますと幸いです。本補助金にかかるトラブル等について当社は一切責任を負いかねます。

事業承継・引継ぎ補助金とは

事業承継・引継ぎ補助金とは、事業承継を契機として新しい取り組み等を行う中小企業等及び、事業再編、事業統合に伴う経営資源の引継ぎを行う中小企業等を支援する制度です。

色々なシーンで利用することができ、例えば以下のような費用に対して補填する形で補助金が利用できます。

①創業にあたって廃業を予定している人からM&Aによる経営資源の引継ぎを行った際の、店舗等借入費など(経営革新)
②M&Aを行う際に専門業者を利用した際に発生する専門家費用など(専門家活用)
③M&Aによって事業を譲り渡せなかった者が、新たなチャレンジをするために既存事業を廃業する際に発生する司法書士費用など(廃業・再チャレンジ)


補助金額については類型によって異なり以下となっております。

・経営革新:補助対象経費の1/2~2/3以内で、上限600~800万円(廃業費を伴う場合+150万円)
・専門家活用:補助対象経費の1/2~2/3以内で、上限600万円(廃業費を伴う場合+150万円)
・廃業・再チャレンジ:補助対象経費の2/3以内で、上限150万円


これから事業承継を行う、廃業をして再チャレンジするなどの予定があれば検討してみるのも良いかもしれません。

なお、当然ですが、本補助金は申請後採択されないと利用できません。補助金HP内で採択率が公表されていますが、最近の動向をみると概ね60%程度となっているようです。


当社はM&A支援機関ですが、事業承継・引継ぎ補助金が開始されて以降、毎年のように数々のお客様が申請されております。M&Aであれば売手と買手が存在しますが、同一案件の中で、売手も買手も要件を満たせば申請できるということも魅力で、M&Aを推進しやすくなっている印象がございます。

以降では、専門家活用のケースにおいて、本補助金の申請にあたり相見積を要求されるケース・相見積が免除されるケースについて記載していきたいと思います。

相見積を取らなくてよいケースとは?


本補助金の申請に際しては、「原則として2者以上から見積を取ることが必須」となっています。

公募要領に記載の通り、本補助金の実績報告で提出される証拠資料では、申請された経費が必要な経費か、法令や内部規程等に照らして適正か、経済性や効率性を考慮して経費を使用しているか、などの確認が行われていると思われます。

本補助金は費用補填型の補助金であり、発生した費用の2/3、1/2の補助が得られる(上限有)というものですので、これを悪用し、例えば申請者が業者と共謀して相場よりも高い費用を設定して補助金を高めに申請していないか、など不正受給は特に厳しくみられる部分かと思います。

当然、M&Aを行う当事者としてはM&Aにかかる経費は安い方が良く、業者を選ぶ際には料金面も考慮に入れつつ検討されるかと思いますが、補助の申請についてはそういった料金が安いという証憑も残しておく必要があります。

そのような中でも、実務的に相見積がなじまない以下のような事例については特例的に「相見積不要」と公募要領には記載があります。

①選定先以外の2者以上に見積を依頼したが、全ての専門家・業者から見積を作成できないと断られた場合

選定先以外の2者以上に見積を依頼したものの、見積を断られたケースでは相見積の提出不要となっています。

ただし、見積を断られた事が確認できる書面(電子メールの写し等)の添付が必要となります。

ちなみに、本補助金の定義では、明らかに業務外の専門家・業者に見積を依頼している場合は見積として認められませんので、対象業務を行っている専門家・業者に見積を依頼したものの断られるというケースになるかと思いますが、専門家・業者が見積自体を断るというのは取組自体が困難なケースなどある程度限られるように思います。

②FA・仲介費用において、専門家費用が移動総資産額又は譲渡額に基づくレーマン表により算出された金額以下である場合

FA・仲介の選定専門家のFA・仲介費用見積額が、下記レーマン表により算出される金額(着手金含む報酬総額)よりも低い金額又は同額の場合は、相見積の取得が不要となります。

ただし、以下のような点は対応する必要があります。

・「関与専門家選定理由書」に譲渡額又は移動総資産に基づくレーマン表での報酬総額の試算額を記載すること
・譲渡額又は移動総資産が未定の場合は、想定金額を記載(FA・仲介専門家に確認の上、想定金額の根拠理由を詳細に記載すること※想定金額の根拠が未記載・不明瞭な場合は相見積不要な条件に該当しない
・見積書と委託契約書のFA・仲介費用の算出方法が同じであること


専門家を選んだ理由を記載する資料として「関与専門家選定理由書」が必要であり、ここに合理的な理由が記載されている必要があります。

例えば、どう考えても1億円以上で譲渡するのが困難と思われるようなケースにおいて、想定譲渡金額を5億円としてレーマン料率に収まっていると説明するのは不適切ですし、FA・仲介専門家がのれんの金額を意図的に高く評価していた場合などでも疑念の余地はあると思います。また、見積書は総資産レーマンで計算しているのに、委託契約書は譲渡額レーマンであった、などは不適切となります。


上図のレーマン料率は、M&A業界では一般的なものではあるので、この相場感以下であれば相見積不要と読むことはできますが、専門家によって、最低報酬額は全く異なりますし、計算方法についても、譲渡額でレーマン計算をするのか、総資産でレーマン計算をするのか、あるいは、純資産で計算するのか、譲渡額でもM&A時に支払う役員退職金なども入れるのかはM&A会社によって異なるというのが実情です。

この点、本来は売手側も専門家を選ぶ際に注意して選んでいるはずで、経済合理的な料金であることの証明は容易なはずですが、売手企業の中には「貴社との資本提携に興味がある」などの売り文句で営業を受け、専門家との契約をしてしまい、後で確認したらレーマン料率で計算したよりも著しく高い最低報酬額を設定している専門家だった、というケースも多々あります。

最初に業者を選ぶ段階で「レーマン料率」やその計算方法の違いについて理解をしておくのが望ましいです。まだ専門家に依頼はしたものの買手探し中というくらいのステータスであれば料金の安い専門家にも依頼するというのも選択肢としては良いのかもしれません。

当社は、本補助金の申請が可能な「M&A支援機関」であり、売手側は最低報酬額300万円(税抜)と、中小企業庁がM&A支援機関に対して確認した最低報酬額の中央値500万円(税抜)よりも安価で、上場仲介会社などで設定されている2,000万円(税抜)と比較するとかなり割安とは思いますが、客観的に自社の報酬体系がどうかを説明できるというのは業者側にも必要です。

電子・電気・機械分野に関わらずM&A支援を承っておりますので、お気軽にご相談いただけますと幸いです。

③システム利用料において、成功報酬(成功手数料)のみのM&Aのマッチングサイトに複数登録して、当該成約手数料を申請する場合

M&Aマッチングサイトのシステム利用料については、複数のマッチングサイトに登録して、その中の1つのマッチングサイトに成約手数料を支払う場合は相見積不要となります。

ここでいうM&Aマッチングサイトというのは、例えば、「TRANBI(トランビ)」や「バトンズ」、「M&Aサクシード」、「M&Aクラウド」、「M&Aナビ」などのような、M&Aの相手先を見つけるために使用するサイトを指します。マッチングサイトによって手数料の徴収方法・金額などは異なりますので注意が必要ですが、売手側は完全無料というところも一定数存在します。

マッチングサイト1社のみであったり、着手金等のランニングコストがかかるマッチングサイトは相見積が必要になります。

④FA・M&A仲介費用において、2024年3月18日(9次公募公表)前にFA・M&A仲介業者と専任条項がある委任契約を締結し、補助事業期間中に締結した基本合意又は最終契約に基づく中間報酬又は成功報酬の場合

公募が公表される前に専任条項がある委任契約を締結し、採択された後、補助期間中に基本合意・最終契約を行い中間報酬や成功報酬を支払った場合で、FA・M&A仲介業者との契約上相見積取得が困難な場合は相見積の対象外となります。

「専任条項」というのは、「そのFA・M&A仲介業者以外とは委任契約を結ばず、M&Aを行う際にはそのFA・M&A仲介業者を通して行う」という売手側なり買手側を拘束する条項となります。

専任条項と相見積はミスマッチなものではありますので、このような例外があるものと思います。

M&AはFA・M&A仲介業者との委任契約から起算して、半年以上かかってM&Aが成立するということも実務的によくありますので、補助金の公募が始まる前から専任契約を締結していた場合、と限定されています。

なお、FA・M&A仲介業者との契約は必ずしも「専任」とは限らず「非専任」とすることもあります。不動産仲介でいうところの「専属・専任媒介」と「一般媒介」に近いイメージで、取引当事者の意向により決まります。



既にFA・M&A仲介業者を依頼している方がこの補助金を申請しようと思うのであれば、④の理由などによって相見積をしないということも可能かもしれませんが、専任かどうかも確認する必要があるのと、いずれにしても交付決定がされてから本補助金制度の定める事業実施期間内に最終契約・成功報酬支払を行わないといけないなどスケジュール的な拘束もありますので注意が必要です。

当社は本補助金の申請が可能な「M&A支援機関」であり、成功報酬も本補助金の費用としてカウントできます。また、セカンドオピニオンや2社目の仲介会社としてご利用いただくケースも増えてきておりますので、是非選択肢の一つにご検討いただけますと幸いです。

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