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「タイムチャージの報酬体系のM&A会社が少ない理由とは?」M&A会社の儲けのカラクリ

世の中のM&A会社でタイムチャージで仕事を受ける会社は少ないように思います。

これはなぜでしょうか?

弊社では譲渡企業様向けにタイムチャージでの料金体系で対応させていただくことがあります。

詳しくはこちらの記事をご参考ください。


弊社が実際にタイムチャージでお仕事を受けてみて分かったことや、譲渡企業様が知っておくとよいことなどを、「業者側からみたタイムチャージのメリット・デメリット」として以下にまとめてみますので、ご参考いただけると幸いです。


メリット:厳しい状況の会社でも対応できる


多くのM&A会社で採用されている成功報酬での料金体系の場合、譲渡企業様を高い金額で売却できればその分報酬額が上がる「レーマン料率」を採用していることもあり、高い金額で売却できそうな譲渡企業様を探すのが営業上よく見らます。また、譲受企業様の中には業績などが厳しい会社は譲受を行っていないという会社もあるため、相手先を見つけやすくし、成約率を高める意味でも、M&A会社は業績が好調な譲渡企業様に営業が偏りやすい面があります。

M&Aコンサルでは、1つの案件にかかる工数は規模に関わらず一定程度発生することもあり、掛ける工数と得られる収益を考えるとこの辺りはある程度合理的な判断かもしれません。

その点、M&A会社がタイムチャージの料金体系で対応した場合、業績や財務状況に関わらず収益が得られるため、譲渡企業様を区別する必要性がなくなると言えます。

現状では成功報酬体系のM&A会社が多いため、「高く売却できそうな業績が良い会社にはM&A会社の営業が殺到」し、「高く売却できなさそうな業績が悪い会社にはM&A会社が寄り付かない」という状況に近いといえます。


こちらのデータを見ると、そういった事情を推測することもできます。

参照:中小企業庁「2021年版中小企業白書


よくDM営業や電話営業がくるのは「M&A仲介業者」であることが多いですが、M&A仲介業者の間では受領する報酬の内成功報酬の占める比重が高いです(2023年のデータでは、全体95%は受け取った報酬の内80%超の部分を成功報酬として受領)。

とすると、M&A仲介業者は成功報酬の手数料体系で「相手先が見つかりやすく、高く売れそうな業績が良い会社」にアプローチするようになるため、相談者の割合も黒字傾向の会社が多くなる、と考えることもできます。

一方で、「事業引継ぎ支援センター(現事業承継・引継ぎ支援センター)」には赤字傾向の会社が多く集まっているように見えますが、ここは公的機関でありM&Aで商売をするというところではないので、受動的に集まってきた企業の状態がそのまま割合として反映しているものと考えられますし、M&AニーズはあるもののM&A会社では扱えない、もしくは、顧客側がM&A会社の最低報酬額も含めた報酬水準が高すぎると感じたケースなどで、流入がある可能性もあります。

この不均衡についての善悪を述べるつもりはないですが、客観的にみて、もし、M&A仲介業者でタイムチャージの報酬体系が主流になれば、営業の不均衡も改善でき、顧客・業者がともにメリットが得られる可能性もあるのでは、と弊社は考えます。


メリット:一方的な契約解除が減る


タイムチャージの場合、成果物(M&Aの成立)より前に費用が発生するので、譲渡企業様が気軽に「M&A検討をやっぱり辞める」というバイアスが働きにくくなります。

これはM&A会社におけるメリットになります。

M&Aを検討される譲渡企業様には、きちんと気持ちを固めてから行動に移していただくよう促すのがM&A会社の一般的な対応ではありますが、中には途中で気が変わってしまったりされる方もいます。

誠実に辞退を申し出される方もいる一方、一方的に契約解除してM&A終了という事例もM&A業界ではたまに聞きます(中にはM&A会社に根本的な過失があり認識に齟齬があるケースもありますが)。

M&A会社としては相手先(譲受候補先)様との信頼関係にも関わるので、あまりに不義理な交渉中断というのはリスクとなります。

費用がかかることで「本当に今M&A検討を進めるべきか」を真剣に考える方もいると思いますので、タイムチャージにすることで一方的な契約解除は減る可能性はあります。



デメリット:稼げる手数料が減る


一般的なM&A会社の仲介手数料水準を考えると、タイムチャージにすることで稼げる手数料が減る、ということが挙げられると思います。

これがM&A会社がタイムチャージを避ける最大の理由と考えられます。

仮に、下限は最低報酬2,000万円、上限は取引額に応じたレーマン料率で計算、という成功報酬型のM&A会社の場合、成約すれば最低でも2,000万円が入ります。

これは、時給2万円とすると1,000時間分に相当します。一日8時間使用して125日分なので、半年間ほぼ平日の営業時間中は毎日譲渡企業様に付きっきりになるという話ですが、普通の案件ではこんなに稼働することはありません。

M&Aの進め方や、案件の規模感などにも影響を受けますが、実稼働100~200時間以内で完結している案件もそれなりにあると思います。

そのような点から、最低報酬額が一定水準以上であり、成約することが前提であれば、タイムチャージより成功報酬の方が「M&A会社にとって割りが良い」ということにはなりますが、当然成約しないリスクをどう考えるかというところは会社の考え方によるところでしょう。現在では、成約した時に大きく稼げる成功報酬でありつつ、できるだけ成約しやすく手数料が高い案件を受託する、という方向性がM&A会社の営業方針の傾向としてみられると思います。


ちなみに、なぜ弊社はこのようなことまで赤裸々に話すのかと疑問に思われる方もいるかもしれません。

弊社では過去譲渡企業様から「働いた分だけ報酬を支払いたい」という要望をいただいたこともあり、タイムチャージ型の報酬設定も取入れた経緯があります。

確かに、お客様によっては「成約したらいくら」という決め方よりも「働いてもらったらその分だけ報酬を支払いたい」という決め方の方が納得する、という考え方もあり、とりわけ譲渡企業様側においては、相談業務や資料作成など作業的な工数が多々発生することから、タイムチャージでの報酬体系もなじむのではと考えたところがあります。

M&A会社においても人件費が回収できなくなるリスクは減ります。

また、社会的意義の面で言えば、前述の通り、M&A会社にとって成功報酬は譲渡企業様を選別するインセンティブにもつながってしまうことから、全ての譲渡企業様を支援するとは言えないのでは?と感じる部分もありました。

成功報酬型とタイムチャージ型、どちらが正というわけではありませんが、お客様にとっては、様々な選択肢があった方が良いと思いますので、こういったプランも用意しているというわけです。


デメリット:時間管理で揉める


タイムチャージでの報酬の場合、どこまで時間をカウントしたかでわだかまりができることがあります。

当たり前ですが、顧客側がクレームしている時間もカウントされていたりしたら更に火に油を注ぐことになりますし、以前話した内容を何度も説明するのにそれもカウントされていたりしたら納得いかないでしょう。

タイムチャージの場合は、M&A会社側がどこにどのくらいの時間を使ったのかをつまびらかにする必要がありますし、より透明性が求められます。

これは、M&A会社にとってみればごまかしが効かず、どのくらいの時間でどういったアウトプットが出たのか明確に見定められるともいえ、それらを開示できる自信がないとタイムチャージで報酬ももらいにくいという部分も実際あるかと思います。

プロフェッショナルとしてアウトプットに自信がある場合のみ、タイムチャージがなじむといってもよいかと思います。


いかがでしたでしょうか?

譲渡企業様側としては、「動いてもらった分だけ報酬を支払える」「成功報酬と比べて支払報酬が抑えられる可能性がある」「M&A会社が何にどのくらい時間を使っているかが明確である」というのは大きなメリットといえます。

一方で注意しておく必要があるのは、「能力が低いコンサルタントに依頼してしまうと支払った費用が無駄になる」とも言えます。また、悪質なケースでは、「そもそも成約させるつもりがないが手数料を稼ぎに来る業者にあたってしまう」というリスクもあります。

着手金を徴収する成功報酬型のM&A会社で実際問題になりましたが、どう考えても成約しないにも関わらず、イニシャルの報酬欲しさに受託しようとするコンサルタントが出てくる、というのは注意した方が良いです。

報酬形態に関わらず、M&A会社を選ぶときには成約可能性については誠実に教えてくれるコンサルタントを選ぶべきですし、複数の過去事例もその場で説明しながら忖度なく説明してくれる誠実な人を選びましょう。

弊社では「電気・電子・機械」以外の分野でもタイムチャージでの対応を相談可能ですので、ご興味がある方は下のお問合せフォームより一度ご相談下さい。

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