大手半導体・電子部品商社の2025年3月期決算が出揃ったこともあり売上高ランキングを以下の通り集計しました。
ここでは今後の半導体・電子部品商社の動向についても考えてみます。
国内の主要電子部品商社年商ランキング
国内の主要な半導体・電子部品商社を2025年3月期決算の年商順に以下にまとめます。
■国内主要電子部品商社ランキング(2025年版)
会社名 | 売上高 | 経常利益 | 概要 |
---|---|---|---|
マクニカHD | 1兆342億円 2025/3期 | 373億円 2025/3期 | 海外メーカーを多く取り扱う独立系半導体商社。セキュリティ関連にも強み。半導体商社・セキュリティ関連企業へのM&Aの他、医療システム・AI関連への投資も行う。 |
レスターHD | 5,610億円 2025/3期 | 96億円 2025/3期 | UKCホールディングスとバイテックホールディングスが前身。PALTEK、都築電気傘下の会社とも資本提携。 |
加賀電子 | 5,478億円 2025/3期 | 226億円 2025/3期 | 半導体の販売の他、EMS事業、PC関連機器の販売、アミューズメント関連商品販売なども行う。 |
トーメンデバイス | 4,217億円 2025/3期 | 74億円 2025/3期 | 豊田通商が50.1%(2023/3期)の株式を持つ半導体商社。丸文セミコンからも事業移管受ける、韓国のサムスン電子の製品を販売するメーカー系半導体商社。 |
リョーサン菱洋HD | 3,598億円 2025/3期 | 71億円 2025/3期 | 三菱電機などを主要取引先とするルネサス半導体の販売が強い商社。2024/4に菱洋エレクトロニクスと経営統合し、リョーサン菱洋HDを設立。 |
萩原電気ホールディングス | 2,587億円 2025/3期 | 62億円 2025/3期 | ルネサステクノロジとNECエレクトロニクスの経営統合により、ルネサステクノロジ特約店の新興電気のルネサス代理店事業を譲受。 |
立花エレテック | 2,201億円 2025/3期 | 87億円 2025/3期 | FAシステム関連事業も行う半導体商社(売上構成はFAシステムの販売50%程度、半導体デバイスの販売が40%弱程度)。仕入ベースでは三菱電機及び三菱電機グループ、ルネサスが多い。 |
東京エレクトロンデバイス | 2,164億円 2025/3期 | 114億円 2025/3期 | 年商2兆円超の半導体製造装置メーカー東京エレクトロンが33.8%(2023.3期末)を持つ持分法適用関連会社。自社グループ企業への製品供給も行い、産業機器向け・車載機器向けの供給が多い。 |
菱電商事 | 2,158億円 2025/3期 | 60億円 2025/3期 | 三菱電機が35%超の株式を保有(2023.3.31時点)する三菱電機グループのメーカー系専門商社。半導体のほか、FA機器や空調機器、農業関連事業も行う |
丸文 | 2,108億円 2025/3期 | 63億円 2025/3期 | 民生機器、自動車向けの販売が多い。サムスン電子製品の販売に関する事業の譲受(H23年)・譲渡(H30年)をトーメンデバイス(旧UKCHDグループ)と行っている。 |
エレマテック | 1,944億円 2024/3期 ※以降上場廃止 | 76億円 2024/3期 ※以降上場廃止 | 高千穂電気と大西電気が合併してできた会社。豊田通商と資本業務提携を締結。豊田通商が58.6%保有する子会社。2025年1月24日をもって上場廃止。 |
伯東 | 1,831億円 2025/3期 | 73億円 2025/3期 | 半導体の他、ケミカル関連の事業も強みを持つ商社。海外製半導体デバイスを扱うマイクロテック社と資本提携。 |
三信電気 | 1,573億円 2025/3期 | 49億円 2025/3期 | |
新光商事 | 1,160億円 2025/3期 | 6億円 2025/3期 | 日本TI事業をKTLに事業譲渡。 |
ネクスティエレクトロニクス | 豊田通商が100%保有する子会社 |
年商順にしておりますが、「トーメンデバイス」「エレマテック」「ネクスティエレクトロニクス」は豊田通商グループですので、一体としてみるとその存在感はより大きいようにみることができます。
半導体商社は、特定のメーカーを中心に扱うメーカー系の半導体商社と特定のメーカーなどと資本関係も持たず独立して様々なメーカーを取り使う独立系の半導体商社があります。
こちらに記載の半導体・電子部品商社は、一般的には一次代理店としてメーカーから仕入れたものを国内のセットメーカー等に販売することが多いですが、場合によって、二次代理店に販売していたり、EMSなどへ販売していることもあります。
マクニカHDなどになると商社色が強いですが、加賀電子のようなEMS事業を持つ商社や萩原電気のような組込システムといったプロダクト開発を行っている会社もあります。その意味では、マクニカHDが加賀電子や萩原電気といった会社に半導体を販売先する、といったような同業間のサプライチェーンも存在します。
業績動向を見る上では、まず商社が持つプロダクトラインとそれが搭載されるアプリケーションの市況・販売先となるセットメーカーの市況を確認するのがよいでしょう。例えば、パワー半導体のラインアップを多く持つ「インフィニオン・テクノロジーズ」「オン・セミコンダクター」「STマイクロエレクトロニクス」「三菱電機」「富士電機」といったメーカーの半導体を取り扱う商社であればそれらが使われる産業機器・自動車等の販売動向を確認する・セットメーカーが輸出している先の景気動向を確認する、といった具合です。
半導体・電子部品商社については、規模が大きくなればなるほど、あらゆる産業に対応できるラインアップを網羅的に獲得する傾向があるので、規模が小さい商社は特定の業界動向に業績が左右されやすくなる可能性もあります。
今後の半導体・電子部品業界の動向
現在、半導体・電子部品業界の見通しとしては調整局面という見方が多いようです。
グローバルでの需給で考えると、2020年にコロナ禍でのPC・データセンター需要が増加し、2021年に自動車やスマホといったアプリケーションの需要が回復したことにより半導体・電子部品需要は向上しました。しかし、2022年頃から中国のゼロコロナ製作や不動産不況が本格化し、2023年頃から景気減速や在庫の調整が表面化しました。半導体・電子部品の納品先であるセットメーカーの業績見通しでもこうした点で指摘されています。2024年頃から徐々に回復しつつありますが、AI関連の需要や、メモリ相場の回復によるところも大きいです。
生成AIの需要拡大においてハード的にはGPU・HBMメモリの需要が高くなったり、自動車用半導体として熱伝導の良いSiC素材の半導体の需要が高くなるといった、高性能半導体が注目を浴びるようになっています。
現在は部分的な需要改善ですが、今後中長期的には半導体・電子部品需要は成長局面に入るという見方もあります。
当社では、半導体・電子部品業界を専門に扱うコンサルティングも提供しております。M&Aによる譲渡・譲受にご関心がある場合にはこちらもご参考ください。
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