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「事業承継の見積はどうやって取った方がいい?」M&A仲介のワナについても徹底解説


「我が社を継いでくれる人は身内にはいないから、他の会社にしようかな」

と思うと、なかなか自力では難しくなってきますし、業者を使うケースも増えてきます。しかし、業者の手数料は三者三様で、しかもとても一般的に安いとは言えない金額を設定されています。

それではと複数の業者から相見積を取ろうとすると、今度は「弊社は株価レーマン方式を採用しているのでお得です」とか「弊社は総資産レーマン方式を採用しているので取引の安全性が担保されます」とか、色々なアピールを受けるので、一体どれが一番良いのか分からなくなります。

例えば、どの携帯キャリアが一番安いかな、という比較であれば相見積はとてもシンプルですが、M&Aでは一体いくらで売却できるかも分からないですし、どんなコンサルタントがどんな成果を出してくれるかも分かりません。

結果、あまり良く分からないからのとりあえず信用できそうな大きな仲介会社を選んだり、毎度たくさん送られてくるM&A仲介会社のDMから依頼する先を選ぼうとします。

最近、M&A仲介のワナという言葉も広まっていますが、これはひとえに安易な業者選定をした結果、何らかの被害を受けたり、働きに対してあまりにも高すぎる手数料を払う羽目になってしまったということなのです。

今回は、事業承継を行う際の正しい見積の取り方と、M&A仲介のワナについてお伝えしていこうと思います。当社もM&A仲介会社ではありますが、本来顧客側が納得するようなサービスを提供するのがあるべき姿だと思っておりますので、悪質な営業を行う仲介会社に対しては排除したい側の立場ではあります。ご参考いただけますと幸いです。

事業承継にかかるコスト

事業承継にかかるコスト

先ず、事業承継したいと思っている方が、実際に他社へ事業承継する際のコストはどのくらいでしょうか?

スキームにもよりますが、概ね以下の項目が主な費用となります。

①M&A業者への委託手数料
②外部専門家(税理士・弁護士など)の費用
③旅費交通費
④印紙代(事業譲渡やその他契約書が発生する時)
⑤代表者変更等の登記費用

中でも一番インパクトのあるのは、①のM&A業者への委託手数料、です。

②は依頼する専門家にもよりますが常に一緒にいるわけではないのでスポットでの依頼費用程度ですし、③は売手側が買手側に訪問する際の費用ですが普通は買手が来てくれるのでかからないことも多いですし、④⑤は売手・買手で折半とするケースが多く金額的にもそれほど大きなものではありません。

つまり、このM&A業者への委託手数料を下げれば下げるほど、効率よく会社や事業を売却した代金を残すことができる、ということになります。

中には、M&Aマッチングサイトを使って自分で買手を探すのでM&A業者には依頼しない、という方もいますが、そのような場合では①の費用がそのまま無くなるケースが多いです。M&Aマッチングサイトは有料のところもありますが、売手のみ無料というところもためです。

M&A業者への委託手数料の相場感

M&A業者への委託手数料の相場は、基本的に高額で、業者によって幅があり、計算方法も様々で、徴収のタイミングも異なります。

なので、単純比較できないと思われがちですが、そうではありません。

多くの仲介会社の成功報酬というのは、「各業者が独自に設定している成功報酬の計算方法により計算された成功報酬金額」か「各業者が独自に設定している最低報酬金額」のどちらか高い方が最終的に支払う金額とするという契約にしています。

そして、多くの中小企業オーナーが「各業者が独自に設定している最低報酬金額」を払っている事実があります。

ということは、まずはこの最低報酬金額に着目してみることで仲介会社毎の手数料について高い・安いを判別することができるということです。


少々分かりづらいと思われますので、具体例を挙げます。

以下は、中小企業庁が公表している「M&A支援機関登録制度実績報告等について」の資料に、大手・中堅の仲介会社の最低報酬額を記載したものになります。


統計を取っているM&A業者というのは、中小企業庁に登録されているM&A支援機関ですので、概ね国内で活動しているM&A仲介会社のほぼ全てという見方でよいと思います。

上図を見ることで分かるのは、M&A仲介会社が設定している「最低報酬額」は100万円未満~3,000万円と非常にバラつきがあり、高い「最低報酬額」を設定しているのは大手・中堅のM&A仲介会社ということかと思います。

例えば、「M&Aキャピタルパートナーズ社」や「M&A総合研究所社」に依頼した場合、設定される最低報酬額が2,500万円とすると、いくらで売却しても2,500万円(+税)の手数料は最低でも発生します。

M&Aの取引額や資産規模が比較的小さい会社がこうした最低報酬額が高い仲介会社に依頼すると、売却して受け取る金額の内、仲介手数料の占める割合が大きくなります。場合によって、受け取る金額よりも手数料が大きくなり、持ち出しが発生します。

当社の場合は、売手側の最低報酬額は300万円(+税)と設定しておりますので、売手企業の状況によっては大手・中堅のM&A仲介会社に依頼した時と比較して1,000~2,000万円程度の支払手数料の差が生まれることがあります。さらに、M&A仲介は買手側からも手数料を徴収するので、その手数料によるM&A取引金額の影響も考えるともっと差が生まれることがあります。

詳しくはこちらでも説明しておりますのでご参考ください。

大手・中堅のM&A仲介会社各社の手数料については、以下に詳細も載せておりますのでご参考ください。



相見積を取らせない?M&A仲介の営業のワナ


上記の通り、最低報酬額の設定もあるので、相見積を取ると各社から違う手数料の提示が出てきます。

これを基にある程度業者選定できるものですが、M&A仲介会社によってはここでの判断を惑わせるような営業をしているケースがあり、売手が安い手数料の業者を選べなくなっているという現状もあります。

それはどのようなケースか、以下に記載します。

買手がいるということを強くアピールし、手数料の議論にもっていかない

最近はメディアでも問題になっていますが、DMや電話などで「買手がいるのでM&Aで会社を売らないか」という営業がM&A仲介業では大変多く行われています。

買手が実際に一企業を調べ上げて買収オファーをかけるということは多大な労力を要するので、実際に具体的な打診が行われているかというとそうではなく、仲介会社側が売手を発掘するためにかなり広範囲に架空の買収話を持ち掛けているケースが割合として多いように思います。

当社ではそうした類の営業は一切しておりませんが、実際にこれになびいてしまい、営業をしてきた仲介会社に仲介を依頼してしまう売手も相当数いるのも事実です。ただ、具体的に検討している買手がいるケースは基本的に無いので、その後の動き方自体は他の仲介会社と大して変わりません。

ここでは、営業してきた仲介会社の手数料がどうかというよりも「買手を見つけられる力がある仲介会社だ」「買手がいるならM&Aを任せてみよう」という売手の誤認で仲介の依頼が行われている面も多分にあるため、冷静に比較すればその半額以下に仲介手数料を抑えられる状況にありながら、手数料の高い仲介会社に依頼してしまっている、という現状もあります。

実際、M&Aでよく買収する買手(ストロングバイヤーとも言われます)は、どの仲介会社でも打診可能なケースも多いため、わざわざ高い手数料を払って打診する合理的なメリットは無いと思います。

手数料が高い仲介会社というのは、顧客側が手数料の高い・安いで選び始めると選ばれなくなることも理解しているので、一層営業に力を入れたり、手数料ではない部分をアピールする傾向もあると考えられます。

専任契約を結ばせる

M&Aの当事者(売手・買手)と仲介会社の間で締結する仲介契約については、「専任」か「非専任」かの別があります。

「専任」の仲介契約を締結すると、他の仲介会社と仲介契約は締結することができなくなり、M&Aをするならその仲介会社を通してでないとできなくなるという縛りがあります。「非専任」の仲介契約ではその縛りはありません。

M&A業界や、M&A仲介の仕組み、上記のようなM&A仲介手数料の水準などの情報が無いまま、「どこの仲介会社に依頼しても大体手数料は同じだろう」という誤解をしたまま専任契約を締結してしまうと、あとから修正が効かなくなります。

少なくとも業者側はお客様側よりも上記のような情報は知っている状態であることが多いはずですが、親切に「他の仲介会社は弊社よりも手数料が安いので一度話を聞いてみては」などと案内してくれるわけではないので、ここはお客様側が自分で調べて比較検討しないと知り得ない部分だと思います。


これ以外にも、「手数料は高いが高く売れるようにするから仲介させてほしい」とアピールする利益相反行為が疑われるような営業が横行しているのが現状です。

失敗しない事業承継の見積の取り方


事業承継を専門家を入れようとするのであれば、どのくらいの手数料がかかるのかは必ず確認した方がよいです。

というのも、どのようなコンサルタントが、どのような動き方をして、その結果どのような成果があるのかが、M&Aにおいては最初の段階で分からないからです。そのような結果が読めない中、手数料だけは明確に決めましょうというのが仲介契約ですので、安全に進めたいのであれば手数料は最小化しておくのが無難です。

中には、「手数料が安いところは質が悪い仲介なので」というネガティブキャンペーンをする仲介会社もいますが、手数料が安いことと質が悪いことは直接因果関係がありません。逆に、手数料が高いのに、新人同然の担当を付けてM&Aが滅茶苦茶になる事例も多発しているので、「お客様側は手数料は安い方が当然良い」「コンサルタントの質はきちんと見極めましょう」が常識として理解してよいです。

具体的な見積の手順としては以下の通りです。

①まずは仲介会社、コンサルタントの評判・レベル感を確認(違和感があるなら辞めた方が良い)
②次に自社の価値を確認する(複数の仲介会社に株価算定させて中央値付近をひとまず想定株価とする)
③その想定株価でM&Aした際の見積もりを複数社から取得
④手数料が安いところで進めてみて、進まない場合は次に安いところで進めてみる


①については見積以前に、自分の会社の情報を伝えても大丈夫かどうかの見極めとなります。

大手・中堅のM&A仲介会社でも、顧客の中には「担当者がいい加減」「頼りない」という意見を漏らす方もいますので、会社の規模で安易に判断せず、まずは、どういう仲介会社なのかを確認しつつ、そもそも会ってよい仲介会社なのか見極めましょう。その仲介会社のホームページでは基本的に自社アピールが中心になりますので、あまり参考にならず、SNSのような媒体で、複数の第三者からの評価を参考にする方が実態に近く参考になると思います。

②については、自社の価値を理解する意味で株価査定というのは重要になります。

仲介会社が行う株価査定は簡易なものが多いため、必ずしも正確なものだとは思わない方がよいですが、1億円なら買手がつきそうなのか、5億円はさすがに無理なのか、というレベルでもざっくりとでもよいので把握しておきたいところです。

③は、そのざっくりとした想定株価を基に、仲介会社の手数料を判別する工程です。

例えば株価レーマン方式を基準にすると、仮に想定株価が5億円であれば、最低報酬額が500万円でも、1,000万円でも、2,500万円でも、最終的な支払手数料はどこも5%で2,500万円となります。一方で、想定株価が1億円なら、最低報酬額が500万円なら5%の500万円となりますが、最低報酬額が2,500万円の仲介会社の場合は最低報酬額が適用されるので2,500万円と、仲介会社によって2,000万円の手数料の差が生まれます。

最終的な株価は分からないまでも、その誤差を意識して「想定株価5,000万円、1億円、1億5,000万円の3パターンで見積出してみて」と依頼してみましょう。この見積結果を並べることで、どの仲介会社経由で売却したら一番手残りが多いか、が可視化できるようになります。

④は、手数料が安い仲介会社で買手が見つからない、などがあった場合の対処になります。

買手が探せるかどうかは探してみないと分かりませんが、手数料が安い仲介会社でもアプローチできるなら手数料が安い仲介会社を優先させる、という方針を取るのであれば、まず手数料が安い仲介会社を優先的に買手打診させるのが合理的です。

たまに、手数料が高い仲介会社と手数料が安い仲介会社を非専任で同時に打診させているケースも見られますが、非専任の時でも仲介会社同士の打診が被らないようにどちらの仲介会社にどの買手を当たらせるかを交通整理することが実務上多いため、気持ち手数料が安い仲介会社を先に走らせた方がよいです。

以上のような、M&A仲介会社の使い方をすると比較的リーズナブルに仲介を依頼できるかと思います。ご参考いただけますと幸いです。



いかがでしたでしょうか?

事業承継をする際、M&A業者に依頼すると数百万~数千万円など安くないコストが発生します。

それにも関わらず、あまり吟味せず業者を選んでいるケースも多いため、ここに注目していただくだけでより合理的で納得できる金額で依頼することができると知る機会にしていただければと思います。

なぜ、今回のような情報を当社が出しているか疑問に思われるかもしれませんが、当社は最低報酬額300万円で設定している安い側の仲介会社であるからです。安い側の仲介会社は手数料についても事実を並べて本音でお伝えすることができますが、高い側の仲介会社はその議論をしたがりません。営業上不利になるからです。

こうした、その仲介会社の置かれている立場によってお客様への説明内容も変わってくることは、お客様側が混乱してしまうことにも繋がりますので、ここでは事実を並べてご理解してもらいやすい形でお伝えしました。

当社はM&Aを仲介する場面においても事実を並べて分かりやすくお伝えするよう心がけておりますので、お客様の満足度・納得感に繋がっていると思っております。本記事の内容に限らず、M&Aについてのお困りごとがございましたらお気軽にご相談いただければと思います。

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